二条城の床が鳴るのはなぜ?鶯張りの仕組みと防犯説の真相

二条城の床が鳴るのは「鶯張り(うぐいすばり)」と呼ばれる現象で、床板を固定する「目かすがい」という金具と釘がすれ合うことで、あの独特の「キュッキュッ」という音が生まれています。

修学旅行で「忍者が侵入するのを防ぐための防犯装置」と習った記憶がある人も多いかもしれませんが、現在の研究ではもともと音を出すことを目的として設計されたわけではないというのが定説になっています。二条城の公式サイトでも「目かすがいと釘のこすれによって音が生じている」と明記しており、防犯目的説は後世に語られるようになったものです。

鶯張りを実際に体験できるのは二の丸御殿の廊下。国宝に指定されている建物の中を歩きながら、あのキュッキュッという音を耳にすることができます。

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項目内容
正式名称鶯張り(うぐいすばり)
場所二条城・二の丸御殿の廊下
音の正体目かすがいと釘のすれ合いによる摩擦音
音のイメージ「キュッキュッ」とした甲高い音
当初の目的音を出すことが目的ではなかった
防犯目的説後世に語られるようになった俗説
この記事でわかること
  • 二条城の床が鳴る仕組みと「目かすがい」の正体
  • 「鶯張り」という名前の由来
  • 忍者対策の防犯説が誤りとされる理由と現在の定説
  • 実際に鶯張りを体験できる二の丸御殿の場所と見学情報

二条城の床が鳴る正体は「鶯張り」という仕掛け

二条城

引用:二条城

「キュッキュッ」という音の名前の由来

鶯張り(うぐいすばり)とは、古くからの日本建築に見られる現象で、廊下を歩いたときに床板がきしんで音を出すものを指します。その音がウグイスの鳴き声に似ていることから、この呼び名がついたとされています。

実際に二の丸御殿の廊下を歩くと、足を踏み込むたびに「キュッキュッ」という甲高い音が響きます。木材のきしみというよりも、少し金属的な質感のある高い音で、確かにウグイスの「ホーホケキョ」とは違うものの、透き通った鳥の声を連想させる不思議な音です。

「鶯張り」という言葉の記録としては、1878年(明治11年)刊行の『西京新誌』などに見られます。当時からこの音は京都の名所の特徴として語られていたようです。

音が鳴る仕組み、目かすがいという金具の正体

あの音の正体は、「目かすがい(めかすがい)」という金具と釘のすれ合いによって生まれる摩擦音です。通常の廊下とは少し異なる構造になっています。

二条城の公式サイトでも「音は目かすがいと釘のこすれによって生じている」と明確に説明されています。

仕組みをもう少し詳しく見てみると、次のようになっています。

①床板の固定方法

通常の床板は根太木(床を支える木材)に密着させて釘で固定されていますが、鶯張りの廊下では「目かすがい」という長さ約12cmの鉄製の金具が床下から取り付けられています。この目かすがいには2個の釘穴があり、そこに釘が打ち込まれています。

②音が生まれるメカニズム

床板の上を歩くと、体重がかかって床板が下に押し下げられます。このとき、目かすがいと釘がすれ合い、金属同士の摩擦音として「キュッキュッ」という音が発生するのです。木のきしむ音ではなく、金具と金具がこすれる金属音というのがポイントです。

目かすがいは時間が経つと釘穴が広がり、目かすがいと釘の間にすき間が生まれます。このすき間が大きくなるほど、踏み込んだときの摩擦が強くなり、音がより鳴りやすくなります。

鶯張りがある場所は二の丸御殿の廊下

二条城の鶯張りを実際に体験できるのは、二の丸御殿(にのまるごてん)の廊下です。二の丸御殿は1603年(慶長8年)の築城以来、江戸幕府の将軍が京都に滞在する際の御殿として使われてきた建物で、現在は国宝に指定されています。

6棟の建物が廊下でつながれており、見学ルートに沿って歩いていくと自然と鶯張りの廊下を体験できます。部屋数33室、800畳余りの広さを誇る御殿の廊下全体が鶯張りになっているため、見学中はずっとキュッキュッという音が聞こえ続けます。

なお、二の丸御殿の内部は撮影禁止です。廊下の音を耳と記憶にしっかり刻み込んで帰ってくださいね。

◎京都の世界遺産スポットの滞在時間については、こちらも参考にどうぞ。
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二条城の床が鳴る理由、忍者対策説は本当か?

二条城

引用:二条城

「忍者侵入を防ぐため」という説が生まれた経緯

鶯張りといえば、多くの人が「忍者などの侵入者を察知するための防犯装置」と習った経験があるのではないでしょうか。修学旅行のガイドや昔の解説板でも、そのように説明されていたケースは少なくありませんでした。

確かに、考え方としては理にかなっています。夜中に廊下を歩けば音が鳴る。静かに忍び込もうとしても、どうしても音が出てしまう。警備の人間に気づかれてしまう、というわけです。

この「防犯目的説」は明治末にはすでに語られていたとされており、長い間、鶯張りの「設計意図」として広く信じられてきました。「鶯張り=忍び返し」というイメージは、江戸時代の緊張感ある時代背景ともぴったり重なり、多くの人の心に刷り込まれてきたのです。

現在の定説は「意図せず生まれた音」

ところが現在の研究では、この防犯目的説は正確ではないとされています。

鶯張りの廊下が生まれた本来の設計意図は、着物の裾が釘頭に引っかからないようにすることでした。釘頭が床面に出ない構造にするために、床下から目かすがいで床板を固定するという工法が採用されたのです。つまり、防犯のために作ったのではなく、着物対策として設計した結果、副産物として音が出るようになったというのが実態です。

二条城の公式サイトでも「人が歩くと鳥の鳴き声のような音がなることから鶯張りと呼ばれている。音は目かすがいと釘のこすれによって生じている」と説明されており、防犯目的という記述はありません。

「防犯目的で意図的に設計された」という説明を記した案内板は、研究の進展にともなって各地で見直されています。知恩院でも、案内板の内容を改める方針が示されました。

修理すると音が消える?知恩院の事例が証明したこと

鶯張りが「経年劣化による副産物」である、という最も説得力のある証拠が、2011年に行われた知恩院の修理です。

知恩院の鶯張りを修理したところ、廊下を歩いても音が聞こえなくなりました。目かすがいの釘穴が広がっていたのを、修理で締め直したことで、すれ合いによる音が出なくなったのです。

さらに興味深いのは、知恩院の阿弥陀堂では、再建からおよそ100年が経過した後に「鶯張り特有の音」が出るようになったという事例です。最初は鳴らなかった床が、年数をかけて目かすがいの釘穴が広がったことで、音が鳴り始めたわけです。

この2つの事実は、鶯張りの音が「経年劣化によって後から生まれたもの」であることをはっきりと示しています。もし最初から防犯目的で設計されていたなら、修理で音が消えるのはおかしいですし、年数が経ってから音が出始めることもないはずです。

「修理すると音が消える」という逆説的な事実が、防犯目的説を覆す一番の証拠になっているんですね。

もっとも、このことが鶯張りの体験としての価値を下げるわけではありません。400年以上の歴史を経て、建物が自然に生み出すようになった音を、現代の私たちが直接聞けるというのは、それだけで十分に特別なことです。

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まとめ:二条城の床が鳴る理由を知って、より深く楽しもう

二条城の床が鳴る現象について、あらためて整理します。

  • 音の正体は「目かすがい」と釘がすれ合う摩擦音
  • 音が鶯の鳴き声に似ていることから「鶯張り」と呼ばれる
  • 体験できる場所は二の丸御殿の廊下(国宝)
  • 「忍者対策・防犯目的」という説は現在は否定されている
  • 本来の設計意図は着物の裾が釘に引っかからないようにすること
  • 音は経年劣化によって生まれた副産物であることが研究で判明している

二条城を訪れて二の丸御殿の廊下を歩くとき、「この音は400年かけて自然が作り出したものなんだ」と思うと、また違った聞こえ方がしてきます。防犯目的説の「ロマン」は失われたかもしれませんが、その代わりに、長い歳月と建物が織りなす本物の歴史の音が聞こえてきます。

二条城を観光する際はぜひ、足の踏み込み方を変えながら音の違いを楽しんでみてください。ゆっくり踏むと高い音、少し早く歩くと音が途切れる、といった変化も面白いですよ。