京都・宇治にあるレトロな雰囲気の「大阪屋マーケット」、なんだか気になりますよね。
この不思議な佇まいの建物に、なぜか惹かれてしまう…そんな方も多いのではないでしょうか。
実は私もそのひとり。
大阪屋マーケット入り口にあるピザ屋さん「アンティカ ピッツェリア ラジネッロ」に食事に行ったことをきっかけに
と気になったので色々調べました。
大阪屋マーケットは、昭和の市場だった建物をリノベーションして生まれた、新旧が共存する特別な空間です。
というのも、1962年に建てられたこの場所は、かつて地域の人々の生活を支える活気ある市場でした。
時代の変化とともに空き家となりながらも、地元の有志による再生プロジェクトによって、今ではチャイ専門店や駄菓子屋、どら焼き屋、ピザ屋、ハンバーグ屋など、多彩な個性が同居する場として生まれ変わったんです。
ここでは、大阪屋マーケットがどのような歴史を持ち、誰の手で、どんな想いを込めて今の姿になったのか。
そして、そこにどんなお店が集まり、どんな空気感が漂っているのかをたっぷり紹介します。
大阪屋マーケットとは?歴史と再生の物語から紐解く
1962年に建てられた昭和レトロ市場の成り立ち
高度経済成長期に誕生した生活密着型の集合店舗とは
大阪屋マーケットが誕生したのは1962年、高度経済成長の真っただ中。
この時代、多くの地方都市で「集合店舗型の市場」が誕生し、地域住民の生活を支える中心的な役割を果たしていました。
大阪屋マーケットも例外ではなく、食料品や日用品を扱う小さな商店がひとつ屋根の下に集まり、毎日多くの買い物客でにぎわっていました。
店と店のあいだには人の声が飛び交い、昭和の温かみある暮らしの風景がそこにはありました。
かつての活気を物語る「痕跡」が今も残る理由
当時の活気は、今も建物の随所に残されています。
たとえば、魚屋で使われていた照明器具や、むき出しの配管は、改修後もあえてそのまま残され、新しい店舗の空間に自然に溶け込んでいます。
ただ古いものを置いているのではなく、かつての営みを感じられる“生きた痕跡”として大切に受け継がれているのです。
レトロであることを「演出」するのではなく、実際にそこで時間が積み重ねられてきたという事実が、今の空間の説得力を生んでいます。
その歴史的なリアリティが、多くの人の心を惹きつけてやまない理由だったりもします。
空き家から再生へ|大阪屋マーケットの変遷
バブル崩壊とともに迎えた静寂の時代
バブル経済が崩壊し、流通が大型商業施設中心に変化していくなかで、大阪屋マーケットにも徐々に変化が訪れました。
車社会の進行や、郊外型スーパーの台頭により、商店街そのものの集客力が低下し、人の流れが変わってしまったのです。
かつてのにぎわいは次第に失われ、営業をやめる店舗が目立つようになり、最終的には空き家同然の状態になっていきました。
あの場所が静かに閉ざされていた時間は、10年を超えていたとも言われています。
空き家化した市場が再生プロジェクトの対象になるまで
そんな“止まった時間”を再び動かしたのが、地元の有志たちによる再生プロジェクトでした。
鍵となったのは、2014年に設立された「宇治観光まちづくり株式会社」です。
複雑に分散していた所有権を買い取り、改修に向けた土台を整えたことで、大きな一歩が踏み出されました。
その後、専門家や建築家、地域の若者たちが集まり、「ただの改装」ではなく、「新しい価値を生み出す空間」への挑戦が始まったのです。
空き家だった市場は、まちと人をもう一度つなぐ場所として再起動しました。
さらに詳しい歴史や今に至る背景を知りたい人にぴったりの動画を見つけました。
興味がある方はぜひご覧ください。
「大阪屋マーケット再生計画」のコンセプトと中心人物
「ひとつ屋根の下」に込められた思想とは
単なるリノベーションではない“共創”の設計思想
大阪屋マーケットの再生には、はっきりとした思想があります。
それは「ひとつ屋根の下」というコンセプトに象徴されています。
この言葉には、ただ物理的に屋根があるという意味ではなく
としての意味が込められています。
新しく加わった店舗たちは、互いに競争するのではなく、異なるジャンルやスタイルを持ちながら、同じ空間をともに彩っています。
だからこそ訪れる人にとっては、単なるショッピングではなく、空間を「巡る」ことで多様な感性に触れることができる、そんな特別な体験が生まれるのです。
「人が集まることで虹が出る」の意味
再生プロジェクトに携わった関係者の言葉に
という印象的な表現があります。
これは、人が集い、それぞれの色=個性が交わることで、新しい価値が生まれるという考え方です。
単に賑やかであるだけではなく、人と人の交わりそのものが「場の魅力」を作り出す、という哲学的な視点が、この空間にはしっかりと息づいています。
だからこそ、訪れた人は「何かに触れた気がする」のかもしれません。
宮城俊作氏が描いた“まちづくり”のビジョン
被災地での経験を原点とする都市デザインの思想
この再生計画の中心にいたのが、アーバンデザイナー・宮城俊作氏です。
彼は阪神・淡路大震災の被災地で
「一度壊れたまちが再び動き出す」
という姿を目の当たりにし、その体験を原点に、まちに“火を灯す”仕事を続けてきました。
大阪屋マーケットのプロジェクトも、まさにその延長線上にある挑戦だったのです。
失われた時間を否定するのではなく、そこに新しい灯りをともす。
そんな優しいまなざしが空間に息づいているようです。
町を再び灯す場所としての再生プロジェクト
大阪屋マーケットは今、レトロであると同時に“未完成”な空間でもあります。
これは、今後も人の手と想いによって変化を続ける「進行形の場」であることを意味しています。
リノベーションは終わりではなく、始まり。
テナント、地域、訪問者、それぞれの想いが重なり合って、これからも変わり続けていく。
大阪屋マーケットとは、まさに「まちの未来を試す場所」と言えるのかもしれません。
テナントの個性が生む、多層的で立体的な空間体験
「チャイ」から「昭和の駄菓子」まで多様な店が並ぶ理由
古さを活かしながら新しさを注ぎ込む店舗ミックス
大阪屋マーケットに足を踏み入れると、まず驚くのが
「この空間にこんなお店が?」
というギャップです。
築60年のレトロな建物に入っているのは、ただの昔懐かしい商店ではありません。
そこには、インド式チャイを土器のカップで楽しめる「ワッテチャイ」や、昭和の味わいを今に伝える「駄菓子屋タイムスリップ」、丁寧に仕込まれた“赤皿”が人気の大衆酒場「ちょい呑み はわい」など、まったく異なる世界観を持つ店舗が軒を連ねています。
しかもそれらが、まるで最初から一緒にあったかのように、違和感なく空間に馴染んでいます。
いずれも、レトロな建物の“空気感”に寄り添いながら、自らの個性をしっかり打ち出しているのです。
これは偶然ではありません。
出店にあたっては、建物の雰囲気や歴史性を壊さず、自分の色を持ち込めるかが重視されており、それが店舗全体のバランスを整える鍵になっています。
一見バラバラに見えるが調和している秘密
業種も雰囲気もバラバラなはずなのに、なぜここまで空間としてまとまりがあるのか。
その秘密は、“ストーリー性の共有”にあります。
すべてのテナントが
からです。
という想いが、出店者同士の共通項となり、結果として自然な一体感が生まれているのです。
さらに、マーケット全体に流れる昭和レトロ×現代センスというトーンが、各店の独自性をうまく包み込んでくれています。
だからこそ、一軒ごとの個性を楽しみながらも、「大阪屋マーケット」という全体像がぶれずに保たれているのです。
ただの商業施設じゃない!“滞在したくなる”空間設計
「奥に行きたくなる」建築の仕掛けとは
大阪屋マーケットを訪れた人が口をそろえて言うのが、「どんどん奥に進みたくなる」という感覚です。
これは、設計の妙によるものです。
もともとの構造を活かしつつ、リノベーションではあえて「視界の抜け」を演出しています。
店の奥からさらに光が差していたり、柱の隙間から別の店の気配が見えたりと、好奇心を刺激する工夫がそこかしこに仕込まれているのです。
また、動線は迷路のようでありながら、ストレスなく自然に進めるよう設計されています。
“歩きたくなる空間”としての魅力が、訪問体験を立体的にしています。
世界観を壊さず引き立てる各店の工夫
各店舗も、世界観を壊さないよう細部にこだわっています。
たとえば、照明や内装には建物の素材感を活かしたアレンジが加えられ、木材や金属の質感が絶妙に残されています。
一部の店では、あえてむき出しの天井やガス管をインテリアとして活用しており、“建物の時間”そのものを演出に取り込んでいます。
このような統一感のある演出が、滞在時間を自然に引き延ばし、「次の店も覗いてみたい」と思わせる循環を生んでいます。
大阪屋マーケットは、ただ買い物や飲食をするだけの場ではなく、“その空間に身を置くこと”自体が楽しみとなる、体験型の場所なのです。
大阪屋マーケットが“今”目指している姿とは?
どんな人に来てほしい場所なのか?
地元の人・観光客・クリエイター・それぞれにとっての価値
大阪屋マーケットは、誰にとっても「自分の居場所を見つけられる」空間を目指しています。
地元の人にとっては、懐かしさを感じるだけでなく、日常にちょっとした刺激を与えてくれる場所。
観光客にとっては、宇治の定番とは少し違う“深みのある体験”ができる場所。
そしてクリエイターや若い世代にとっては、古い建物を活かした新しい表現に触れ、自分の感性を刺激されるような場所です。
それぞれがそれぞれの目的でこの場所を訪れ、重なり合う。
そんな多層的な居場所としての機能が、大阪屋マーケットの魅力をより強くしています。
大人にも子どもにも「懐かしさ×発見」を届ける構造
この空間が面白いのは、大人も子どもも「なつかしい」と「初めて」を同時に体験できる点です。
昭和レトロな雰囲気に、子どもたちは「知らないけど面白い」、大人たちは「知ってるけど新しい」と感じる。
その“世代を超えた感覚の交換”が、ここでは日常的に起きています。
マーケット内では、親子で駄菓子を選んだり、3世代が並んでうどんをすする光景も。
そうしたひとときが、この場所を特別な思い出として心に刻むきっかけとなっているのです。
私が訪れたピザ屋さんも、若いカップル・3世代親子・子供2人を連れたお母さんと、色んな顔ぶれがありました。
「大阪屋マーケットのこれから」が生む期待
イベントや新テナントが起こす次の波
大阪屋マーケットは、すでに完成した施設ではありません。
今もなお、イベントの開催や新しいテナントの誘致が続いており、“変わり続ける空間”として更新されています。
たとえば、地域の学生による企画展示や、地元作家とのワークショップ、夜間の音楽ライブなど、小さな試みが日常的に積み重ねられています。
こうした動きが、訪れるたびに違う表情を見せてくれる要因となり、リピーターの支持を集めているのです。
まちの未来を照らす小さな炎としての役割
大阪屋マーケットは、単なる商業施設ではなく、まちの未来を照らす場であるという役割も担っています。
老朽化や空き家の問題が多くの地域で深刻化するなか、ここはその“解決の一例”として、全国の注目を集めています。
また、若い事業者にとっても「小さく始められる場所」として、挑戦の場となっています。
このような循環が、地域に持続的なエネルギーを与え続けているのです。
そしてそれは、目立たないけれど確かに灯り続ける「小さな炎」のように、まちを静かに、でも着実に照らしているのです。
大阪屋マーケットの行き方・アクセス・駐車場
JR「宇治」駅から徒歩約6分。
京阪「宇治」駅から徒歩約7分ほどの距離です。
基本情報
- 店名
大阪屋マーケット - 住所
京都府宇治市宇治妙楽41 - 問い合わせ
info@osakayamarket.com - 営業時間
店舗により異なります - 定休日
店舗により異なります - SNS
インスタグラム
ホームページ
駐車場
専用の駐車場はありません。
まとめ:大阪屋マーケットとは?昭和レトロ×現代センスが息づく場所
大阪屋マーケットとは、単にレトロな雰囲気を楽しめる“古い建物”ではありません。
そこには、昭和の市場として栄えた歴史、静かに眠っていた時間、そして今を生きる人々の想いが、しっかりと息づいています。
一度は忘れられた空間が、地元の人々とクリエイターの手によって再び灯された…、そんな物語がこの場所には詰まっています。
そして今、その空間には、チャイの香りや駄菓子のにぎわい、どら焼きの甘い気配やおしゃれなピザ屋などが混ざり合いながら、訪れた人をあたたかく迎えてくれます。
レトロとモダンがただ共存しているのではなく、互いを引き立て合いながら調和していることが、大阪屋マーケットの最大の魅力です。
未来に向けて少しずつ変わりながらも、決して忘れてはいけない“過去の時間”が、確かに残っている場所。
それが、大阪屋マーケットなのです。
この空間で過ごすひとときが、あなたにとっての新しい「なつかしさ」になるかもしれません。
そして美味しそうなお店の数々も忘れてはいけません。